こんばんは。火花の学者、おじょーです。
『ストリクスヘイヴンの秘密』実装から1ヶ月。シルバークイルが最強であるという結論は、もはや揺るぎない事実となりました。しかし、誰もが同じ正解を奪い合う今の環境において、その『正解』に依存し続けることは、果たして本当に論理的と言えるでしょうか?
今夜は、環境の主流派をあえて封印することで見えてくる、新たなドラフト理論の研究です。17Lands.comのデータを活用して、「白黒禁止」という状況でいかにして勝利をデザインするか。その事前研究の全貌を共有します。
青を避けては通れない
白黒を禁止とした場合、選択肢はおのずと「青赤(プリズマリ)」と「緑青(クアンドリクス)」の2つに絞られます。なぜなら、『ストリクスヘイヴンの秘密』は対抗色をテーマとしたセットであり、有効色の組み合わせである「赤緑」は、そもそもアーキタイプとして成立しないデザインとなっているからです。
つまり、白黒という「正解」を捨てた瞬間、望むと望まざるとにかかわらず、我々は必ず「青」を使いこなさなければならないということに他なりません。そうして、この過酷な旅の相棒となる「青のカード」たちを眺めていくと、あまりにも不都合すぎる現実と向き合うことになります。
「青は妨害やドローこそ強いが、除去やクリーチャーは貧弱である」これが、多くのプレイヤーが抱く青への第一印象でしょう。しかし、それはあくまでも表面的な数値に踊らされた「先入観」に過ぎないのです。
3/3の天井と青の真価
環境全体のクリーチャーサイズを精査すると、ある事実に突き当たります。白黒も、青の4~5マナ域も、おしなべて「3/3」という数値に収束しているのです。



白黒が強いのは、この基準値に「3マナ」という早さで到達できるからです。


ならば、一手遅れる青が同じ「3/3」の土俵で戦っていては、白黒の劣化版で終わってしまいます。しかし、青には白黒にはない独自の強みがあります。それは、環境の最大サイズ……4/3や4/5、あるいはそれ以上の巨体を擁する「赤」や「緑」のどちらとも手を組める柔軟性です。



サイズを以て速さを制す
「青をやる」ということは、単にドローや打ち消しを使うことではありません。白黒の「早さ」に対抗するために、赤や緑のパワーを借りて「環境の最大サイズ」を叩きつける戦略を採るということです。
白黒の3/3ラインを地上から踏み潰し、あるいは空中から粉砕する。この「サイズを以て速さを制す」という勝利の方程式こそ、私が白黒禁止縛りの中で見出した、逆転の勝利構造なのです。
データが示す青の骨格
あらためて、青のクリーチャーたちを、17Lands.comの統計データで比較してみて、重要だと思われる3枚のカードを導き出しました。これらは、青赤・緑青いずれの分岐に進んだとしても必ず使うことになる、青の「骨格」ともいえるカードたちです。
幻視家の舞

本来はプリズマリ(青赤)のカードですが、クアンドリクス(緑青)でも迷わず採用すべき1枚です。無色2マナで「ライブラリーの上から2枚を見て1枚を手札に加える」サーチ能力は、それだけで序盤の安定に寄与します。
さらに、赤マナを一枚忍ばせておけば、後半には「3/3飛行を2体展開する」という強力な勝ち手段に変貌します。先述した「3/3という天井」を、一気に2面用意できるこのカードは、まさに環境の主導権を握る鍵となります。
風景画家

2マナ2/1と平凡であるものの、特筆すべきは《鮮烈なアイデア》という5マナの呪文を準備することができる点にあります。
序盤は軽量ブロッカーとして相手を牽制し、終盤に引き込めば2ドローのアドバンテージへと繋がる。「どの局面に引いても役割がある」という一貫性こそが、青を支える重要な土台となります。
ミューズの激励

5マナ3/3飛行というスタッツ自体は、環境の平均値に過ぎません。しかし、このカードの真価は「インスタント」であることです。相手のアタックに合わせて不意打ちのブロッカーとして立ちはだかることで、盤面を一方的に、有利な交換へと導くことができるのです。
ドラフト1パック目の鉄則
白黒禁止縛りにおいて、最も避けるべき事態。それは、他のプレイヤーに「青が空いている」と勘違いされ、参入を許すことです。
我々は望むと望まざるとにかかわらず、青と心中する運命にあります。ならば、1パック目の役割は明確です。「有力な青のカードを徹底的に囲い込み、他のプレイヤーへのシグナルを断つ」こと。
では、何を優先してピックすべきか。ここで、17Lands.comの「ALSA(平均取られ順)」が重要な指標となります。勝率(GIH WR)ではなく、あえてALSAに注目するのは、それが「他のプレイヤーがどれだけそのカードを欲しがっているか」という市場価値を示すからです。
| カード名 | ALSA | GIH WR |
|---|---|---|
| 本質の散乱 | 5.13 | 57.1% |
| 幻視家の舞 | 5.44 | 56.5% |
| 水の媒介者 | 5.82 | 54.9% |
| 置いてけぼり | 5.94 | 57.4% |
| 速足の学び | 6.21 | 56.2% |
| 風景画家 | 6.22 | 53.3% |
確保すべき「抑止力」
先ほど挙げた《幻視家の舞》や《風景画家》はもちろんですが、1パック目では《本質の散乱》や《置いてけぼり》といった、青の貴重な「除去枠」を意識的にカットしましょう。
これらの「青の除去」が下家に流れることは、それだけで「青が空いている」という誤ったサインになりかねません。


データの「揺らぎ」を読み解く
統計を眺めていると、いくつか興味深い「揺らぎ」が見えてきます。例えば、《氾濫の名演奏家》は勝率(GIH WR)こそ低いものの、ALSAは意外と高く、多くのプレイヤーに意識されています。データ以上に「現場で評価されている」カードと言えるでしょう。
一方で、《水の媒介者》のように、データ上の評価が高くても、実際の運用に疑問が残るカードも存在します。1パック目で《水の媒介者》を優先的に取るべきだとデータは言っていますが、どうしても納得できないのです。


ドラフト2パック目の分岐
1パック目では、徹底して青を囲い込むように動きました。これは、周囲に「青は空いていない」と知らしめ、テーブルを統治するための布石です。続く2パック目は、パックの流れ……左隣からの贈り物を見極めながら、「赤と緑、どちらを相棒にするか」を最終決定するフェーズへと移行します。
統計によれば、白黒を取らないという制約下において、最も勝率が高く、かつ空席になりやすいのは「クアンドリクス(緑青)」です。したがって、我々の基本ルートはクアンドリクスを目指すことになります。では、いつ、どのような条件でルートを切り替えるべきなのか。その判断基準を整理しましょう。
緑青への分岐
緑青ルートを支えるのは、圧倒的なサイズで戦線を粉砕する《フラクタルのマスコット》と、柔軟性の塊である《プテラフラクティルス》の2枚です。

- 《フラクタルのマスコット》…6マナ6/6という規格外のサイズに加え、出た瞬間に相手を無力化する麻痺能力が、膠着した盤面をこじ開けます。

- 《プテラフラクティルス》…状況に応じてサイズを変えられる飛行戦力。序盤の壁から終盤のフィニッシャーまでこなすこのカードは、「緑青を目指すプレイヤーが真っ先に狙うべき重要パーツ」であるというデータが出ています。
2色拘束であるこれらのカードは、他アーキタイプ(黒緑など)との競合が起こりにくいという特徴があります。だからこそ、《プテラフラクティルス》が7手目以降も流れてくるようなら、それは右隣にクアンドリクスを目指しているプレイヤーが不在である、という何よりのサイン。迷わず緑の門を叩くべきです。
青赤への分岐
一方で、以下のような「赤の強カード」が5手目以降も残っている場合は、プリズマリへの分岐を検討する価値があります。
- 除去の流入:《あからさまな嘲り》や《秘本破》といった、本来なら早々にピックされるはずの優秀な除去が中盤以降も見られるなら、赤が空いている証拠です。


- 打点の爆発力:《表現豊かな火踊り手》や《エレメンタルのマスコット》を確保できているなら、スペルによって打点を跳ね上げる「手数で押す」戦略が成立します。


基本は「最大サイズの緑」で圧倒する準備をしつつ、赤から「手厚いサポート(除去)」が流れてきた時のみ、プリズマリへと軌道修正する。この柔軟性こそが、白黒禁止という荒野を生き抜くための知恵なのです。
関連動画
さて、理論は出揃いました。白黒という正解を捨て、青を独占し、環境の「最大サイズ」で盤面を制圧する。
この勝利の方程式が、実際のランク戦という混沌の中でいかに機能したのか。そして、論理を尽くした先に待っていたのは、勝利の女神の微笑みだったのか、それともデータですら予期せぬ「不都合な真実」だったのか。
その全貌を収めた実戦編の動画は、近日公開予定です。
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