【事前研究】『ストリクスヘイヴンの秘密』ドラフト:クアンドリクスの多色化戦略

SOSリミテッド

こんばんは。火花の学者、おじょーです。

今回は、『ストリクスヘイヴンの秘密』ドラフトで安定した勝率を誇り、環境の穴場と言える「クアンドリクス(緑青)」の組み方について、17Lands.comの統計データを見ながら研究していこうと思います。

緑青の立ち位置

環境において、クアンドリクス(緑青)はロアホールド、シルバークイルに次ぐ「第3の勢力」という位置付けにあります。

まずは、17Lands.comの最新統計データから、その特異な立ち位置を確認しましょう。

学部Wins#Games勝率
ロアホールド(赤白)412267128457.8%
シルバークイル(白黒)317155524257.4%
クアンドリクス(緑青)202833709654.7%
プリズマリ(青赤)351966478054.3%
ウィザーブルーム(黒緑)265794898454.3%

この表から読み取れる最も重要な事実は、勝率以上に「#Games(試合数)」の少なさです。クアンドリクスの試行回数は首位ロアホールドの約半分。これは、卓内でクアンドリクスを専願しているプレイヤーが極めて少ないことを意味します。

ドラフトにおいて「競合がいない」ことは、それだけで平均的なデッキ出力を底上げする強力なメリットとなります。

なぜ上位2学部ではなく、今あえて「3番手」のクアンドリクスを研究するのか。それは、上位学部にはない「戦略的自由」がここに眠っているからです。

環境の定義者と「純血主義」

ロアホールドやシルバークイルは、豊富な除去と強力な強化スペルによって環境の基準(物差し)を定義しています。

しかし、彼らはその「速度」と「マナカーブ」を維持するために、3色以上のタッチが許容されない構造的な不自由さを抱えています。1ターンの淀みが敗北に直結する彼らは、純正2色という規律に縛られるしかないのです。

クアンドリクスが謳歌する「多色設計」

対してクアンドリクスは、強固なマナ基盤という「経済力」を持っています。他学部が色拘束という規律に喘ぐなか、我々は赤の火力や黒の確定除去など、環境のあらゆる「解答」を自由に輸入し、システムに組み込むことができます。

上位学部が「固定された正解」を取り合っている隙に、我々は強固な基盤を背景に、より自由で、よりスケールの大きい学生生活(デッキ構築)を謳歌できるのです。

今回は、この「空いている学部」の特権を最大限に活かし、データ上の勝率を超越するための多色化戦略を紐解いていきます。

コンセプト

データを見ると、クアンドリクスには興味深い特徴があります。純正2色(緑青)で組んだ場合の勝率は53.4%ですが、3色以上をタッチした瞬間に55.5%へと跳ね上がります。

この数字が物語っているのは、クアンドリクス特有の弱点である「除去の不足」です。緑と青という色は、サイズで勝ることは得意ですが、一度盤面を捲られると干渉する手段が極めて限定的です。

したがって、最強のクアンドリクスを構築するための最適解は、《篤学な一年生》による強固なマナ基盤を基点とし、他学部から「除去」を、そして環境の歪みが生んだ「最強のフィニッシャー」を輸入することにあります。

強固なマナ基盤

  • 《篤学な一年生》…1マナ《篤学な一年生》→2マナ《不屈の自然》というマナカーブに沿った動きを1枚で実現してしまううえ、《不屈の自然》で好きな色の土地を持ってくることでマナ基盤がかなり安定しています。
  • 《水薬師の収集品》…いわゆるマナリス。好きな色のマナを出せるので、足りない色をなんでも補える。

収斂:放置された「バグ」

この戦略の核となるのが、《怨恨のアルカイック》です。「収斂」により、支払った色の種類に応じて最大7/7という超大型のスペックを誇るこのカードは、間違いなく環境屈指のフィニッシャーです。

特筆すべきはそのALSAで、7.44という驚異的な低さを示しています。多くのプレイヤーが「多色化は不安定だ」という固定観念から、この最強のアタッカーを7手目以降まで放置しているのです。

この「評価の歪み」を利用しない手はありません。我々は《篤学な一年生》という1枚で「加速」と「色調整」をこなす超高性能なマナ基盤を確保することで、この放置されたバグ……7/7の怪物を、再現性を持って戦場に送り出します。

除去

緑青において、除去は自前で用意するものではなく、他学部から「借りてくる」ものです。赤の火力か、黒の確定除去か。データが示す答えは、明確に「黒」を支持しています。

クアンドリクスが除去を必要とする状況とは、自慢のサイズをさらに上回る、あるいはサイズで解決できないボムレアが対面に現れた時のみです。であれば、相手のタフネスという「変数」に左右される火力呪文ではなく、どんなサイズも等しく無に帰す黒の確定除去こそが、このデッキの構造的欠陥を埋める「マスターキー」となります。

デッキ構成

クアンドリクスの構築は、コントロールデッキの設計思想に近いものになります。

序盤はマナ基盤の構築という「投資」に専念し、中盤以降に圧倒的なサイズとアドバンテージで「回収」する。この投資サイクルを安定させるための構成が以下です。

カードの種類小分類枚数
マナ加速・ブロッカー11
2マナ6
3マナ5
アタッカー6
その他(除去など)5
土地18

除去はマナカーブに組み込まない

通常のコントロールは2マナ、3マナに除去を配置しますが、
このデッキではその枠を《篤学な一年生》や《水薬師の収集品》といったマナ基盤に割きます。

除去を打つのは、これらで3色目を供給できるようになった後、つまり4ターン目以降という設計です。
「2ターン目に除去が打てないこと」を前提とした、一歩遅らせた設計が重要になります。

土地は18枚

5色すべてを運用し、かつ《怨恨のアルカイック》を最大出力で稼働させるためには、17枚の土地では構造的に不足します。緑を7枚、青を7枚、沼を1枚。そこに2色土地を3枚加えた合計18枚が理想的な配分となります。

ここで重要になるのが、2色土地の選び方です。

白は「収斂」のカウントを稼ぐためだけに必要で、実際に白い呪文を唱えることは稀です。したがって、貴重な基本土地の枠を《平地》に割くのは非効率です。白マナは、必ず《紛争の曠野》(赤白)や《アミティの公開討論所》(白黒)といった「2色土地」からのみ供給する設計にします。

残りの2枚は、《タイタンの墓》(黒緑)や《壮麗なる頂》(青赤)など、デッキの核となる緑や青を含んだ2色土地を選択します。

ピック優先度

ここまでに挙げたキーカードのALSA値を見ていきます。データの裏付けにより、我々がどの順序で「内定」を出すべきかが論理的に見えてきます。

カード名分類ALSA
最後の喘ぎ除去3.82
道に迷う除去3.87
篤学な一年生マナ基盤3.89
死と組み打つ除去4.03
壮麗なる頂2色土地5.51
タイタンの墓2色土地5.53
水薬師の収集品マナ基盤5.61
アミティの公開討論所2色土地5.79
紛争の曠野2色土地5.95
怨恨のアルカイックアタッカー7.44

基本的な序列は「除去>マナ基盤>2色土地>アタッカー」となります。ここで注目すべきは、フィニッシャーである《怨恨のアルカイック》が7.44という極めて遅い位置にいることです。つまり、アタッカーの確保は後回しでも成立します。

一方で、黒の除去カードと《篤学な一年生》は3.8前後という高い競争率の中にあります。この「激戦区」をどう制するかが構築の鍵となります。

パックごとの戦略的指針

この多色構造を完成させるためには、パックごとに優先順位を変動させる「柔軟な設計」が必要です。

  • 1パック目:マナ基盤の優先確保…まずは《篤学な一年生》や《水薬師の収集品》を優先します。
    どんなに強力な除去を拾っても、それを出力するための「色」がなければ無用の長物だからです。
    まずは「何色でも出せる構造」を先行投資で作り上げます。
  • 2パック目:状況に応じた調整…確保できたマナ基盤の枚数を見ながら、足りない「色(2色土地)」や「除去」をバランスよく埋めていきます。
  • 3パック目:除去とフィニッシャーの回収…基盤が整っているはずの最終パックでは、全力で除去を拾いにいきます。

《篤学な一年生》があるかないかで、他色から輸入した除去の「稼働率」は劇的に変わります。除去という「強力なソフトウェア」を動かすために、まずはマナ基盤という「高性能なハードウェア」を最優先でセットアップする。これこそが、クアンドリクス専願における最も合理的なピック順序です。


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